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焼酎アドバイザー伊藤健の「酒蔵探訪記」

第1回:神楽酒造(宮崎県)

第1回:宮崎県 神楽酒造「夢見る力 芋」

いざ出発!

宮崎県神楽酒造の風景
宮崎県神楽酒造の風景。山々に囲まれ、大自然が広がる。

2006年4月20日、晴れ時々曇り。朝八時半、オフィスの下に集合。カメラマンと神楽酒造福岡支店の矢野さんにご挨拶をしていざ出発!酒造に行くのは初めてで、前日の夜から緊張してなかなか眠れなかったことを覚えている。神楽酒造までは車で約三時間。車中、カメラマンと写真の打ち合わせをしたり、矢野さんに質問したりした。そのときのメモをまとめたものが下記である。

【原料について】
・今回のシモン芋を使って焼酎を造っているところは一箇所しかなく(お土産屋などの小さいところは除く)シモン芋を作っているの農家は、日本にあまりない。
・水は阿蘇山祖母山系の地下220mから自然湧水している水を使用している。この水は火山によって出来た地層を通ることで、ミネラルたっぷり。地元の町民はみんな、この水を飲んでいる。焼酎の特徴は、原料や製造過程によるものもあるが、やはり水が一番だと矢野さんは語る。
・シモン芋は焼酎にするとそんなに芋臭くはならない。神楽酒造自体が「ごてごての芋焼酎は造りきらん」と矢野さん。さらには、「芋が苦手な人向けに、誰でもが飲める焼酎に」とも仰っていた。
・麹は「白麹」を使用。やさしい口当たりと、芋の甘みが引き出されるそう。

【製造について】
・蒸留方法は常圧蒸留。
・一年半、タンクに貯蔵。
・今回のこだわり(苦労した点)は管理。特に温度管理が味に大きく影響してくるので、常に目を光らせていなくてはいけない。


到着

神楽酒造の焼酎樽
多くの樽が並んでいる。静かに眠っている焼酎の数に驚きを隠せませんでした。

予定通り三時間で神楽酒造に到着。車から降りると鼻を衝く匂いが強烈でした。後から聞いた話ですが、アルコールの匂いだけでなく、クエン酸のすっぱい匂いが混ざり合っているそうです。 酒造の方にしてみれば、それが日常なのでそんなに気にならないようです。まず社長室に案内されて、社長と副社長にお会いしました。社長室には賞状やら写真やらがたくさん並べられていて、特に興味深かったものが南極で撮影された神楽酒造の焼酎の写真でした。地平線まで広がる結晶の絨毯に「しらせ」と書いた船首が堂々と立ち、手前に並ぶ焼酎がキラキラと輝いていました。 お話の中には、今度、西都市に芋焼酎専用の工場が出来るというものがありました。

お昼を副社長にご馳走になり、酒造内を案内していただきました。まず麦焼酎の眠る樫樽が所狭しと並ぶ薄暗い倉庫。ひんやりした空気が厳かな雰囲気を醸し出していました。古い樽から新しい樽まで様々で、副社長もどこにどんな焼酎が眠っているか把握できないほど。中には昭和から眠っている焼酎樽もあり、興奮は一気に高まりました。また隣の工場では、焼酎を自動で箱詰めしていく機械が大きな音をたてて動いていました。小学校以来の工場見学に胸を躍らせながら副社長のお話を聞いていました。

製造過程

一次仕込みのもろみの様子
一次仕込みの発酵現場。佐藤氏に説明を受け、焼酎が生きていることを実感。

次に技術者の佐藤さんの案内で、焼酎製造過程の現場を見せていただきました。今回、残念ながら芋の収穫時期が8月〜10月ということですでに蒸留が終わっており原酒がタンクに貯蔵された状態。そこで、今回は共通する過程を見せていただきました。

まずは一次仕込みとなる「モロミ」。この過程は麹(副原料のデンプンを糖化した状態)に酵母菌と水を加え、アルコールと二酸化炭素を発生させます。いわゆる「醗酵」。醗酵は温度管理が重要となってきます。それは、温度が高くなりすぎる(30度以上)と酵母が弱ってしまい出来たモロミが腐りやすくなり、醗酵歩合が低くなるのです。

もろみの発酵
もろみがボコッボコッと音を立てて発酵。

ここで、モロミを腐りにくくする成分が「クエン酸」。 この一次仕込では、クエン酸が麹の中から溶出してくるため、つーんとした酸の匂いに鼻が曲がりそうになります。はじめはプクプクと小さな泡を立てながら醗酵していましたが、私たちにも醗酵の様子がよく分かるように佐藤さんが撹拌して醗酵を促してくれました。すると、下から何かが膨らむようにボコッ!ボコッっと音をたてて暴れだしました。まるで、何かの生き物が鼓動をうって眠りから覚めるような感じを受けました。

次に、焼酎の原液が蒸留されてくる様子を見させていただきました。小さな窓から覗くようにして、ポタポタと降ってくる原酒を見ていました。それは透明で澄みきった液体。摂りたての原酒は正に焼酎の赤ちゃん。時間と手間をかけて生まれた原酒を目の前にして感動を覚えました。


貯蔵タンク

貯蔵タンクの原酒
タンクに貯蔵している原酒を飲ませてもらった。キレイな透明色と、やさしい芋の香りがたまりません。

「夢見る力 芋」は芋焼酎のため、樫樽ではなくタンクに貯蔵されています。実際にシモン芋で造られた焼酎が眠るタンクに案内してもらうと小柄なタンクが並んでいました。中を覗かせてもらうと、やはり一番初めに芋の香りが鼻をくすぐります。そしてグラスに焼酎をすくってもらうと、なんとも綺麗な透明色でタンクの底が見えるくらい。これが5月には商品として売り出されると思うと、なんだかワクワクしてきました。





自然湧水

水源地の高千穂峡
水源地の高千穂峡へ。この水が焼酎の味を左右するそうです。

高千穂峡と呼ばれることで有名な場所からすぐのところ。地下220mから湧き上がる水が岩肌の隙間からとめどなく流れていました。「季節や雨量によって水の湧き出る量がちがうんですよ。」と矢野さん。「この水が焼酎の味を左右する。」そう思いながら、いつまでも眺めていました。








矢野さんと酒を酌み交わす

矢野氏と酒を酌み交わす
今回の取材の締め括り。矢野さんと酒を酌み交わして、語り合う。

矢野さんは以前、高千穂に住んでいて、夜星を眺めながら焼酎を飲んでいたそうです。
矢野さん:「それが旨いんだよ!」
伊藤:「東京ではなかなか星を見ながらとは行きませんからね。。。」

桜のシーズンには高千穂にたくさんの人が押し寄せて、交通渋滞という大変な目にあったという。
矢野さん: 「普段は静かなのに、このときは凄かったねぇ〜。後で聞いた話だが、なんと4万5千もの人が訪れたらしいんですよ。」
伊藤:「有名な桜の木なのですか?」
矢野さん:「そう。何だったかな?忘れちゃったけど(笑)」
天岩戸の有名な桜の木だそうです。

酒造のツーンとした匂いはいつまでたっても離れない。
伊藤:「強烈な匂いですよね?」
矢野さん:「私たちにはこれが当たり前、常に酔っ払っているようなもんです(笑)」


〜 最後に 〜

佐藤氏とツーショット
最後に、佐藤さんとツーショット。直接、蔵人とふれあうことでとても勉強になりました。

自然の力に圧倒された私は、ただただ「はぁ〜」っと言うしかなかった。恵まれた自然環境で造る焼酎と一口に言っても、実際に見て見なければ分からないことがたくさんありました。どんなところで焼酎を造っているのか?どんな人たちが焼酎を造っているのか?どんな素材を使って焼酎を造っているのか?どんな想いで焼酎を造っているのか?

今回の取材を通じて直接生産者の方々とふれあうことができてとても良かったです。この日、私が覚えた感動は自分だけのものにせず、お客様や周りの人に伝えていきたいと思います。


 
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